嘘ごと、愛して。
〜side 晴人〜
「…安藤くんがあの日、真凛を送り届けなかったことを悔いているように、私も、後悔しているんだ。一度目は真凛の受けている嫌がらせに気付けなかった時、二度目は今、真凛の異変に気付けなかったことを」
「…うん。写真のことは…なんていうか、」
「私たちが別れた原因の一つにあの写真があったことは確かだけど、根本的な原因はそこでないよ。君が気にするようなことじゃない」
真凛は私という恋人がいながら、他の男を愛した。いつからか心が離れていたのだろうが、少しも悟ることができなかった。
目の前の男に嫉妬を覚えるが、それは身勝手な感情だ。
真凛に他に好きな人がいると言われ、
激情し、
彼女の手を離したのは他でもない、
自分自身だからーー
今だって心配する資格はないけれど、
たった一度でも自分を頼って電話をくれたのだから、
村山姉妹を守る義務はあると思う。
「…君は今でも真凛を?」
「彼女を忘れたことなんて一度もないよ」
悔しくて悔しくて。
生徒会長に立候補したこの男から、奪ってやろうと思った。生徒会を鼻にかけている安藤裕貴から、自信を奪うため、笑い者にさせるため、会長に立候補しようと決めた。
私の方が人望があるはずだ、
敗けるはずがないーー
そう確信を持っていた。
けれど、
"そんな馬鹿げたことして、楽しい?"
冷ややかに己を止める声がした。
普段は大きな口で笑う親友の目が、少し怖かったことを覚えている。
「…僕も、真凛がずっと好きだ」
ああ、こんなことを聞きにきたわけじゃない。
「…だったら貴方も考えて。どうしたら真凛を救えるか」
「言われなくても、そうするつもりだ」
またあの子が哀しんでいるというのに、
その心が全く分からない。