嘘ごと、愛して。
バイバーイと、女の子たちに手を振り、
こちらに歩いて来た正義と目が合った。
「教室にいないと思ったら、いつも此処にいたの?」
上履きを踏み潰し、ポケットに手を入れて歩く彼は、いつもの笑顔だ。
「…留年してたんだ」
「ねぇー」
軽い…。
自分のことで精一杯だったが、妹は言ってたじゃないか。
憧れの"先輩"であると。
「どうして?」
「宿題、やらなかったからかも」
どうでも良さそうな返事をして、私の隣りに座った。
「だったら、きちんとーーちょっと!」
かじりかけのパンに彼の顔が近付いたと気づいた瞬間、信じられないことに、
パクりと食べた。
「俺もメロンパン好きだよ」
「……」
正義の歯型がついたメロンパン。
…私はこれを食べるの??
「美味しっ」
「最低!」
近付いた彼の髪から、
シャンプーの良い香りがして、
少し胸がざわついた。