嘘ごと、愛して。
「正義、楽しそうだったね」
駅までの道のりを晴人さんと歩く。
校庭を走り回り、見事なパス回しを披露した正義に対する歓声は一際高かった。
女子の黄色い声だけでなく、男子の野太い応援も混じる。正義はいつだって性別関係なく多くの人に囲まれている。
正義の世界から私が消えたって、何も変わりはしないだろう。
「どうかした?」
「今日一日、正義に避けられているみたいで」
「気のせいでなくて?」
「…裕貴にももう関わらないって宣言してました」
「急にどうしてかな」
「私の曖昧な態度に愛想つかしたのだと思います…彼は私に好きだと言ってくれたけど、それは真凛に対するものだーー」
言葉に出して気付いた。
「ごめんなさい!」
晴人さんも真凛を愛しているのに。
そして正義と晴人さんは親友だ。
「謝ることではないよ」
晴人さんは穏やかに笑う。
「人を好きになるって悪いことではないでしょ」
「…はい」
初めて知った。
両思いは、奇跡に近いのだと。