嘘ごと、愛して。

「どうだった?」

玄関の扉が開くと必ず真凛が出迎えてくれるようになった。

就職活動を始めて半月ほど。


「…手応えなし」

何社も受けたけれど、
取り柄もない才能もない、おまけに賢くない私に社会は厳しかった。

面接で落とされる日々。


「そっか……」


学校を止めてから私は無理に真凛に事情を聞き出すことをしなくなった。

そのせいか真凛との仲も少しずつ回復し、就職活動を終えて帰ると、2人で話す時間を持てるようになった。

真凛の顔にも赤みが出てきて、日に日に元気になっているような気がした。

「ここ、見つけたんだけど、行ってみて!」


携帯の画面を見せられる。

私がいない間、就活サイトで新しい企業を探していてくれたらしい。


「あ、ここはうちからも近くて良いね」

「でしょ!早く会社に連絡しなよ!私、お風呂掃除してくる」

「掃除なら私が…」

「いいから!」

強引に私をソファーに座らせた真凛は足早にお風呂場に消えた。

はぁ…早く見つけて、みんなを安心させたい。

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