嘘ごと、愛して。

裕貴が取り乱しているところを見たことがなく、何事かと耳を澄ませる。


『僕からの電話は5秒以内に出ろ。いいな?君は僕の言うことだけ聞いてればいい』

裕貴の声が頭をこだまする。

例え電話越しであろうと何十年も聞き続けた裕貴の声を聞き間違えるはずがない。

電話の相手は間違いなく、大切な幼馴染だ。


『真凛、聞いてるのか?また僕に怯えて返事もできないのか。何度も言うが君がそんな態度だと、僕は何するか分からない。真凛の大切な志真の人生をめちゃくちゃにしてやってもいい』


裕貴…?

その声はホンモノなのに、
その内容は、嘘だ。

裕貴はもっと冷静で、優しい口調で…


『それとも晴人や正義を傷付けてやろうか?奴らを殺すくらいの覚悟、僕にはできてる』


ーーコロス?

ダレがダレをーー?


思考回路が停止した。




『真凛、さぁ、話そう』


終話ボタンを押した。


それ以上、聞いていられなくて。
震える指で電話を切った。


一体ナニッ…?

するりと携帯が床に落ち、鈍い音がした。

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