嘘ごと、愛して。
気付かない間に、
水の音が止み、お風呂場の扉が開いていた。
唐突に、無言で真凛が抱き着かれた。
久しぶりに妹の体温を感じた時、
なんとなく、状況を飲み込めた。
「…いつから?」
不安に揺れる真凛の瞳を覗き込む。
もっと早くに理解してあげるべきだった。
「あの写真を撮られた日からずっと……」
脅されて誰にも言えなかったのだ。
万が一にも疑うものかーー小さい頃からずっと一緒だった当たり前の存在を、信じきっていた。
再び、電話が鳴る。
大好きなメロディーが大嫌いになりそうだ。
「ごめん、私も混乱してる…晴人さんに、相談してみない?」
「晴人を巻き込みたくない」
真凛ははっきりと言った。
「だからお姉ちゃんも気付かなかったことにして」
「みんなを巻き込みたくない気持ちは分かるけど、なんの解決にもならないよ。お父さんに話す?」
不甲斐ないが私たち2人の力ではどうにもならない。
けれど泣き寝入りするなんて、絶対に嫌だ。
そして何より、
妹が苦しんできたというのに。
それなのに、
何かの間違いであると裕貴を未だ庇う心が存在していることに、戸惑っていた。