嘘ごと、愛して。
「そして帰り道、いつの間にか土砂降りになってて、ーー彼にキスされた。あそこら辺、死角じゃない?だから、嫌がっても誰も止めてくれなくて…」
一番悲しいシーンを、真凛は笑って話した。
私たちのことを思って。
「それからは2人が知っている通り、走って帰って、不登校になった。もう、限界だった。これ以上、裕貴の好き勝手にされたら、キス以上のこともされそうだったから、怖くて怖くて…」
どうして、ずぶ濡れで帰ってきたあの日。
ちゃんと話しをきかなかったのだろう。
拒絶されたとしても、何度も何度もしつこく聞けば良かった。
「2人に迷惑かけてごめんなさい」
「なんで真凛が謝るの!悪いのは私の方だよ…」
「でも2人のことも傷付けたと思う」
そうだ。真凛は優しい子だ。
誰よりも相手のことを考える、そう分かっていたはずなのに。
偽りの話にばかり耳を傾けて、真凛を疑い始めていた。
姉、失格だよ。
「真凛、これからのことは一緒に考えよう。絶対になんとかしてみせる」
晴人さんはしっかり真凛の目を見て伝えた。
「もう真凛だけに背負わせないから。俺たちを頼って」
いつもは"私"、なのに真凛の前では"俺"なんだね。すごく恋人らしい。