嘘ごと、愛して。
「話あるなら、聞くけど」
「話なんてないよ」
さっき聞いたことは何一つ、正義には話せない。
巻き込みたくない。
以前は裕貴に正義に打ち明けることのないよう忠告された。
上手く私を操っていたわけだ。
賢い裕貴を敵に回すのだから、やはり、正義は巻き込めない。
全部、全部話せたら、とっても楽なのにね。
「泣く理由は?」
「それも言えない」
「言えないなら何も聞かない。だからこれが最後の質問」
正義は私を見下ろして言う。
「今、俺に帰って欲しい?それとも傍にいて欲しい?…俺はアンタの望む方の行動をする」
「……」
そんな聞き方ズルい。
答えるべき選択肢は分かっているのに、口が動かない。
「…かえ………」
真っ直ぐな視線から逃れるように下を向き、気付く。
正義のズボンのポケットから覗く、ソレに。