嘘ごと、愛して。

正義は頬杖をついた。

「俺も、俺なりに悩みあるんだよ。姉貴のこととか、妹のこととか。俺んち、結構複雑でさー俺が家族のバランスをとってるような感じだった。みんなの顔色を伺って上手くいくように色々と裏で手回ししてさ。先に両親と日本を離れた妹は向こうに馴染めずに両親とも上手くいってない。姉は姉で俺が日本に残ったから舞台女優になる夢を諦めて、収入の良い仕事に就いた。俺たちは本当に複雑なんだ」

「そうなんだ…」

「こんな俺でも悩みを抱えてて、たぶんそれは誰の心にもある感情なんだと思う。生きているからこそ、悩むことも必要なんだよ。今の悩みが解決したら、また次の悩みが出てくる」

「そういうものかな…」

けど、と正義は笑う。

「村山ちゃんなら、乗り越えられるよ。ひとつひとつちゃんと乗り越えて、アンタは強くなれる」


他の誰でもない正義の言葉。

胸にストンと落ちる。


「私、…正義に出逢えて良かった」


歯型のついたアップルパイにかじり付く。


「俺はずっと傍にいるよ」

「その言葉、嘘にしたら許さないから」

「嘘にするつもりはないよ」


この先もずっとずっと真凛の傍に、正義と晴人さんが居てくれたら、絶対に大丈夫だ。
2人は真凛を守ってくれる。

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