嘘ごと、愛して。
寂しいという感情を抱かないよう、
どうか、ひとりにして欲しい。
「そういうことで、今日から宜しく」
「やだ」
「お礼もちゃんとする」
「お礼?お金なんて興味ない」
最後の一口を頬張り、立ち上がる。
「お金じゃないよ。聞きたい?」
彼もまた立ち上がり、大きな伸びをした。
「別に聞きたくない」
「冷たいねー。ま、とにかく放課後、宜しくね」
「嫌だよ」
2人で並んで廊下を歩いていると、
正義に注がれる熱い視線だけでなく、彼の人気ぶりも伺える。
「正義、教科書貸して!」
「正義先輩、聞いてください!クラスでーー」
「正義、後で3年の教室に来い!忘れるなよ!」
何度も声をかけられ、結局、教室に着く頃はひとりになっている。
誰も私に声をかける者はいない。
どうやら妹はクラスで浮いた存在になっているようだ。
勉強も部活も、友人関係も、全て上手くいっていた。本当に楽しい毎日を送っていたと思う。
家に帰って学校のことを話す妹の笑顔に嘘はなかった。
妹に、何が起きたのか、何度問い詰めても真凛は震える唇を開こうとはしない。
春休みが始まる直前から、自分の部屋に引き込もるようになった。