嘘ごと、愛して。

「最近の流行りの歌ってよく分からないね」

「えー、ビジュアルも良いし、私は好きだよ」

深夜、真凛の部屋で音楽番組を見る。
学校に行かなくなった私たちは夜更かしも、朝寝坊もし放題だ。

ベッドに寝転がりながら2人でテレビを見たり、雑誌を見たり、一緒に過ごす時間が増えた。


「あ、このバンド、正義が好きなやつだ!」

へぇ。ハイテンションな歌だな。

学校に行かなくなって2週間が経ったが、正義からの連絡はひとつもない。

まぁ、良いけど。


「ねぇ、なんで、私に正義が好きなんていう、嘘をついたの?バレンタインデーにチョコをあげたい人は、正義でなく晴人さんだったんでしょう」


あの日記もそうだ。
正義に心変わりしたと書かれていたけれど、本当はどうなのだろう。


しかし答えは返ってこなかった。

代わりに隣りから小さな寝息が聞こえた。

真凛が安らかに眠れる場所があって良かった。


「おやすみ」

最近は顔色も良く、リビングで両親とご飯を食べるようになった。

少しずつだが良い方向に向かっている。

後は、裕貴のお母さんの誕生日会を待つだけだ。

< 142 / 185 >

この作品をシェア

pagetop