嘘ごと、愛して。
「最近の流行りの歌ってよく分からないね」
「えー、ビジュアルも良いし、私は好きだよ」
深夜、真凛の部屋で音楽番組を見る。
学校に行かなくなった私たちは夜更かしも、朝寝坊もし放題だ。
ベッドに寝転がりながら2人でテレビを見たり、雑誌を見たり、一緒に過ごす時間が増えた。
「あ、このバンド、正義が好きなやつだ!」
へぇ。ハイテンションな歌だな。
学校に行かなくなって2週間が経ったが、正義からの連絡はひとつもない。
まぁ、良いけど。
「ねぇ、なんで、私に正義が好きなんていう、嘘をついたの?バレンタインデーにチョコをあげたい人は、正義でなく晴人さんだったんでしょう」
あの日記もそうだ。
正義に心変わりしたと書かれていたけれど、本当はどうなのだろう。
しかし答えは返ってこなかった。
代わりに隣りから小さな寝息が聞こえた。
真凛が安らかに眠れる場所があって良かった。
「おやすみ」
最近は顔色も良く、リビングで両親とご飯を食べるようになった。
少しずつだが良い方向に向かっている。
後は、裕貴のお母さんの誕生日会を待つだけだ。