嘘ごと、愛して。

真凛と両親は15時に裕貴の家に行くというので、それより1時間前に部屋を出た。

心配そうに私を見送る真凛と目で合図して外に出れば、既に晴人さんが待っていた。


「待ちました?…え、」

「今来たとこだよ」


金髪を風になびかせて立っている晴人さんはグレーのジャケットを羽織り、細身のパンツを着こなしていつも以上にきちんとした身なりだった。

そんな彼とは正反対な出で立ちで、晴人さんの後ろにもうひとりーー


元々明るい茶髪だったが、赤に近い色に染め直したようで、少し雰囲気が違った。前髪を上げて全体的に髪を立たせて、チャラさが増している。

膝小僧部分が擦り切れたパンツのポケットに手を入れ、フードのある服を着て、道端にしゃがみ、大きな欠伸をしていた。

緊張感の欠片もない。


「私は殴り合いは苦手だからね。念のため、呼んだんだ」


「けど…」


大きな伸びをして正義は立ち上がった。


「喧嘩なら引き受けてやるよ」


でも、正義は何も知らない。

姉妹の入れ代わりのことも、
裕貴の嫌がらせも、
何ひとつ知らないのに。

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