嘘ごと、愛して。
忘れもしない3月21日。
大雨の中、真凛は傘もささずに帰ってきた。
マスカラが落ちて黒ずんだ目元には大粒の涙が浮かび、その口からは嗚咽のような叫びが聞こえた。
ちょうどその日、両親は外出していて、とにかくお風呂に入ってきなと、いつも通りに振る舞うことしかできなかった。
問題を抱えているのはいつも私の方で、妹は目指していた高校にも無事に入学し、成績だって上々で、大好きなテニスも充実していたはずだ。
妹の身に何が起きたのか、その理由は何も浮かばなかった。
お風呂に入り落ち着いた妹に、温かい紅茶を淹れて、リビングで向き合った。
双子の姉妹。
ーー私たちは仲良くやってきたはずだ。
例え、妹が優秀で、姉が劣等感を抱えているとしても、妹のことは何より大切だったし、大好きだ。
「もう、学校に…行きたくない」
「なにがあったの?…イジメ?」
「…怖いの」
「何が怖いの?」
妹の隣に座り、震える肩をそっと抱きしめる。
何かが起きたことだけは確かなのに、恐怖心からか、妹は、何も語らなかった。