嘘ごと、愛して。

正義は来た時と同じように大きな欠伸をしながらベッドから起き上がり、晴人さんも立ち上がった。


これから晴人さんは真凛に別れを告げるのだろうか。


「志真」

2人と一緒に部屋を出ようとすると、裕貴に呼び止められた。


「志真には本当に悪いと思ってるんだ。ごめん」

「裕貴のしたことを許すつもりはないけど、幼馴染として裕貴の気持ちに気付けなかった自分自身も許せない」

「殴っても良いよ」

「…そんなこと、できないよ」

「志真の大切な時間を僕は奪ったんだ。志真には僕を殴る権利がある」


ああ、裕貴もだ。
裕貴も今にも泣き出しそうな顔をしていた。
きっとひとりになったら、泣いてしまうのだろう。


「泣いていいよ」


裕貴の胸に飛び込み、背中に手を回す。


「泣いたら気持ちがスッキリするかもよ」

真凛と喧嘩した時、裕貴はいつも私を慰めてくれた。

優しくしてもらった思い出はちゃんと私の心に存在している。これから先も失くすことなく、大切に抱えていくんだ。


けれど裕貴はそっと私を押し、距離をとった。


「ーーやっぱり約束は、しない」


私でなく、廊下で待つ晴人さんと正義を見た。


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