嘘ごと、愛して。
「2人一緒に真凛から離れることで僕たちは平等になれると君は言ったけど、それは違う」
裕貴は苦笑した。
「故意に彼女を傷付けた僕と、守ろうとしている君が、同等であるはずがないんだ」
そっと裕貴に背中を押され、廊下に出た。
「…晴人くんは約束を守る必要はない。真凛を幸せにしてやって。僕はもう真凛を二度と傷付けないから」
裕貴……
「それで安堂くんは納得できるの?」
晴人さんは問う。
「……これ以上、真凛に嫌われたくないから。楽しかったあの頃のようにまた、真凛と志真と、たくさん笑いたいから。そのために気持ちの整理をするよ」
一生、真凛に近付かない約束よりも
幼馴染として真凛の傍にいる道を選ぶ。
それは辛い選択ではあるが、
少なくとも私は嬉しい。
また元のように仲良しの幼馴染に戻れる日が、来たらいい。
「…それじゃあ、またね」
裕貴が部屋の扉を閉めようとするので、思わずドアノブを掴んだ。
「裕貴!また水族館、行こう!」
「志真…」
「ほら、指切り!」
真凛には無責任な姉だと怒られるかもしれないが、私はひんやりとした裕貴の指をとり、絡めた。
晴人さんとの約束をなかったことにするというのなら、この約束だけは、私が絶対に果たすから。何年、何十年先かもしれないけれど、裕貴の選択が間違いではなかったことを、必ず証明してみせるからね。