嘘ごと、愛して。
どれぐらいサッカーボールと戯れていたかは分からないが、額に汗をかいていた。
陽も落ちてきて、いい加減帰ろうと思ったところで、校舎の窓から人影が見えた。
あれは、4階の音楽室前。
窓に背を向けるようにして廊下に置かれたベンチに座る人影だ。
頭を垂れているようにも見える。
なんとなく、気になった。
校内には試験の後片付けをする教師と生徒会くらいしか残っていないはずだ。
受験生か?
ああ、きっと。試験の出来が今ひとつだったのだろうーーそんな、出来心だった。
下駄箱で靴を履き替えて、階段を駆け上がる。
そして俺は、アンタに出逢った。
もしボールが転がっていなかったらとっくに帰宅していただろうし、
もしアンタが窓際にいなかったら、その後姿を見かけることもなかった。
ちょっとした、神様の悪戯だとしても
俺はこの出逢いに感謝してるんだ。