嘘ごと、愛して。
鈴木 正義(すずき まさよし)
高2。
ありふれた名字の為、紛らわしいことこの上ない。中学の時なんて塾に鈴木が3人もいて、"鈴木"
と呼ばれる度に3人一斉に振り返っていた。
だから自己紹介で、必ず「セイギと呼んで」
そう付け足す。
おかげさまで校内で浸透し、別の鈴木さんにも迷惑を掛けていないはずだ。
きっと俺の印象なんて、
いつも明るくて、ポジティブで、
何も考えていない、単純馬鹿。
そんな風にしか思われていないだろう。
とりあえず笑っておく、
それが楽な生き方だ。
だから君のその涙は、
俺の心に焼き付いた。
あれ、俺は泣いたのいつだっけ?
悔しいことも情けないことも、全部、笑って終わらせてきた。
全然納得なんてしてなかったけれど、それでもどうせ生きていかなければならないのだから、と諦めて涙すら出てこなかった。
君はすごいね。
自分の感情に素直に向き合えるなんて。
強いから、君は、己の感情と向き合えるんだ。
俺の世界は嘘ばかりで、
ひどく弱い人間なんだ。