嘘ごと、愛して。

神様は悪戯をしたようだ。


一度ならず、二度、三度とアンタと出逢わせてくれたのたから。



2回目は、受験発表の日だった。

また同じ場所、音楽室前のベンチで受験票を握りしめて静かに泣く君を見て、ただただ興味がわいた。


そんなに桜塚高校に入りたい?
他にも伝統ある進学校はたくさんあるはずだ。


なにもそこまで拘らなくても。と、また俺は静かに立ち去った。











3回目はーー



受験発表の日から1年近く経った。

晴人の彼女として紹介された村山真凛とは、随分と親しくなった。

晴人が選んだだけあって完璧な女性。

けれど真凛は俺にとって、晴人の彼女でしかない。

紹介された時も、友人に嫌がらせをうけていると相談された時も、晴人と別れたと告げられた時でさえ、ーー晴人の彼女として接していた。




「チョコ?」

「うん、作ったの」


真凛に綺麗にラッピングされた箱を渡された。


「俺、チョコには困ってないんだけど」


晴人のように丁寧に断るのも面倒で、全て受け取った。お返しはしないと念押しして。


「まぁ、開けてみて」


誰もいない放課後の教室。
真凛と此処にいるのが、自分でなければ良いのに。本来は晴人の居場所なのだから、違和感しか感じない。

綺麗な箱も、晴人が受け取るべきものだ。


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