嘘ごと、愛して。
私たち姉妹には幼馴染がいる。
安藤 裕貴(あんどうゆうき)。
1つ年上の、頼りになるお兄ちゃん的な存在で、真凛は裕貴に憧れて同じ高校に進学した。
「"ごめん、先に帰ってて ハート"」
「ちょっと、勝手に読まないでよ!」
打っていたメールの内容を後ろから読み上げられ、慌てて送信ボタンを押した。
「誰?」
「別に」
「帰る約束してたんだ?隠すってことは男?」
何故か責めるような言い方だ。
あ、待って。
私は、正義が好きな設定だった。
好きな人がいるのに、他の男性と帰る約束ってどうよ。
「裕貴は幼馴染なの」
「誰それ」
「3年A組の安藤 裕貴」
「あー、生徒会長じゃん」
「うん。中学の時から生徒会でさ。頭も良くて人望も厚くて、これだけ長いこと付き合ってるのに、嫌なところが一つも見つからなくて、」
「だから?」
途中で遮られ、少し冷たい言い方だった。
「そいつが俺よりイケてるって言いたいわけ?」
なにそれ。
異性に順位をつけれる女ほど、嫌な奴はいない。
1番とか2番とか、そうやって順位をつけられるのが嫌いだ。
ーー私は、そうされてきたから。
姉のくせに、2番だから。
いつもいつもいつも…。
「そういう言い方、嫌い。貴方には貴方の良さがあって、それは裕貴も同じだから」
「ふぅん。で、俺の良いとこってどこ?」
「それは…」
困った。
そんな小っ恥ずかしいこと、答えなきゃいけないだろうか。