嘘ごと、愛して。
広いリビングのソファーに座り、項垂れる晴人にココアを入れて弱く暖房をつける。
青ざめた晴人も、同じ内容の電話を受け取ったらしい。
久しぶりの真凛の電話に心踊る晴人の気持ちを無視して、姉を助けてというメッセージだけを投げつけてきた。
「かけ直しても繋がらないんだ」
額に手を当てて溜息をついた。
晴人が溜息をついたところなど、一度も見たことがなかった。
「真凛の家に行ってみるか?親から説明を聞こう」
そうだ、両親から事情を聞いた方が早い。
姉を身代わりにしようなどと、絶対にやってはいけないことだ。
「……言われた通りに動こうと思う」
「言われた通り?」
「真凛が姉を助けてというのなら、そうしようと思う」
晴人は静かに言った。
「真凛が望むことを、私はするよ」
ああ、そうだ。
こいつはいつでも真凛の望みを叶えてきた。
それが真凛の幸せだと疑わずに。
「あいつが本当に何を望んでるかなんて、俺たちには分からないだろうが!」
感情任せに晴人の襟首を掴む。
お前がそんなに弱気でどうする。
「分からないよ…それでも真凛が学校に行きたくないということは、学校で何かがあったのだろう。その原因を除くまで、真凛の心は変わらない。原因を探さないと」
晴人は冷静だった。
弁護士を有望視されている男らしいな。