嘘ごと、愛して。
晴人から離れてそっと目を閉じた。
真凛のことは晴人の方が分かっていると、断言できる。
「俺は晴人と真凛が、早く元のように戻れば良いと思っていたんだ」
晴人は頷いた。
「…まずは目の前の問題を解決しないと」
毎日とは言わないが、真凛と放課後によく話をしていた。異変は感じなかった。
つまり今日?何かがあった?
誰が?どんなことを?
「分かった、晴人の言う通りにする」
「ありがとう。…旅立ちの前に、なんか悪いな」
無理矢理に笑顔を作った晴人に、スリッパを投げ付ける。
2足とも晴人の腹に直撃した。
「痛っ」
「こんな状況で渡米するわけないたろう。バーカ」
「まさか…行かないなんて言うんじゃないだろうね」
「そのまさか」
親友の危機に、傍にいなくてどうする。
そこまで薄情な男に成り下がるつもりはない。
「正義、私を困らせるようなことを言わないで」
「いやだ」
「君は進級試験を受けてないんだよ。進級はできない」
「別に留年して、もう一度2年で良いよ。真凛の問題が片付いたら、留学するわ」
「正義!」
久しぶりに晴人の大声を聞いたな。
顔を真っ赤にして怒りを露わにした晴人を前にして、思わず笑みがこぼれた。