嘘ごと、愛して。
「留学のことを心配してくれるのなら、そんな気遣いはいらないさ。俺は自分の意思で決めたことを否定される方が嫌いだから」
「正義…」
「よし、お代わり頼もうぜ。ラスト一杯」
いつの間にかメロンソーダは空だ。
「蜂蜜ティーにする」
温かい飲み物はすぐに飲めずに、時間がかかる。
ラスト一杯というなら、たっぷり時間をかけて飲もう。
「…俺もそれで」
正義も同じ気持ちなのかな。
少しは離れ難いと思ってくれているのだろうか。
2人で温かい飲み物を注文する。
「私ね、桜塚高校に入りたくて泣いてたわけじゃないの。妹に負けた気がして、悔しくて泣いてた。なんでもできる妹と比べられて双子なのに、って思われることが辛くて」
正義は静かに聞いてくれた。
誰にも話したことのない妹への劣等感を。
「今回の身代わりのことでも分かるように、両親は真凛を最優先に考えてるの。だから真凛と同じ高校に入学して見返してやろうと思った。その結果、上手くいかずに泣いてたの」
これは辛い話だ。
それなのに正義はフッと笑った。
「お前、負けず嫌いなんだな」
「まぁ…そう言われれば、そうかも。結果は伴ってないけど」
「努力した時間は無駄にはならないよ、なんてありふれたことを言うつもりはないけど。少なくとも俺は、真凛の前ではちゃんと笑えなかったよ」