嘘ごと、愛して。
ホームルームが終わり、部活に急ぐ生徒は真っ先に教室を飛び出して行った。
「正義、カラオケどう?」
「いや、正義!バスケ部の助っ人頼むよ!」
えー、と言いながら、正義は教科書をバッグに放り込む。
「帰るんだったら、一緒に帰ろうよ」
仲良しグループの女子たちに囲まれている。
どうするのかな、勉強会。
「今日、先約あるんだよねー、ごめんね」
がっかりした女子たちは、先程、カラオケの誘いをしていたクラスメートに遊びに行こうと誘っていた。
関心が正義から逸れると、私にそっと囁いた。
「駅近くのコンビニで」
そして、返事も待たずに教室から出て行った。
自分勝手な誘いではあるけれど、クラスメートから私に注がれる視線を気遣って、待ち合わせ場所を決めてくれたのかな。
注目を浴びたくないから、助かったな。