嘘ごと、愛して。
クリームソーダとコーヒーフロートを頼み、一息ついたところで聞いてみる。
「私って、貴方にフラれたわけじゃない。なんで一緒にファミレス来てるんだっけ?」
「あ?アンタが友達になって欲しいって言ったからだろ?」
「まぁ、そうなんだけど…」
友達になって欲しいか、それがあの子なりの吹っ切り方だったのかな。
「変なこと、聞くけど。どうして私をフッたの?」
ファミレスのちょうど良い喧騒の中だからこそ、投げかけられた。
隣りのテーブルの女子高生たちが繰り広げる大きなボリュームの恋話に感化されたのかもしれないけど。
みんなが欲しいものを全て手にしている妹に、欠点なんて見つからない。
「その質問、前にも聞いたけど」
「あ、えっと…」
「アンタをフッたことに理由はないよ。好きでも嫌いでもなかった、ただそれだけ」
モテる男の言い分はよく分からない。
どうしようもなく人を好きになることに理由はいらないと言うけれど、その反対もありなの?
「でも付き合ってみたいと思わなかった?だって、私、自分で言うのも何だけど、結構、モテるよ?」
たった数日で正義が良い人だということが分かった。短期間で人を信用するなとは言うけれど、信じられる人だと思った。
正義なら、大切な妹を託せるのに。
「そうだな、」
ん?
正義が続けた言葉は、本当に予想外のものだった。
「アンタ、前より今の方が良いよ」
もう女子高生たちの会話が聞こえてこなかった。