嘘ごと、愛して。
帰宅後、真っ直ぐに真凛の部屋に向かう。
「真凛」
ドアをノックすると、中から物音が聞こえた。
「今日も何にない1日だったよ」
「…ありがとう……ごめんね」
中から小さな声が聞こえた。
聞き逃さないよう、ドアに耳を当てる。
「真凛、なにか話したくなったらすぐに言ってね」
「…うん」
もう2週間、真凛とはドア越しの会話のみだ。
昼間、両親や私がいない間にお風呂や食事をとっているようだが、外に出ている気配はない。
「あのね、真凛」
正義の話をしようと思った。
もしかしたら元気が出るかもしれないから。
「…おやすみ」
けれど妹はそれ以上、話したくないと拒絶した。
「おやすみ」
せっかく双子に生まれてきたのに、
今の私たちは、
お互いのことを何ひとつ分からない。
どちらが出口かも分からない長い迷路の中を、互いに、逆走しているようだった。