嘘ごと、愛して。
昨日、ファミレスでメロンソーダ2杯を飲み干し、かつチョコレートパフェを注文した男のものとは思えない発言。
ああ、手作りが苦手な男子もいるよね。
正義がそこまで神経質には見えないけど。
美香さんが立ち去ったことを見届けて、そっと彼の机にもう2つ飴玉を追加する。
付き合わせたお礼だと言ってファミレスで奢ってもらった借りがある。
「ありがと」
今度は背中越しではあるが、ちゃんとお礼が返ってきた。
振り返らずに頷く。
モテ王子も大変ですね。
授業が始まる前に携帯の電源を切っておこうとすると、裕貴からのメールが入っていた。
"放課後、楽しみにしてる"
絵文字もないシンプルな文章ではあるけれど、マメにメールをしてくれている時点で、その気持ちが伝わってくる。
けれど、
「"私も"」
打ったばかりの文章が、音として聞こえ、勢い良く振り返る。
「ちょっと、」
近い!
携帯の画面を覗き込むために机から乗り出している正義とあまりに近い距離に、驚く。
「また生徒会長にメールか」
彼の吐息が鼻にかかる。
「今度はそっちに乗り換えるわけ?」
綺麗な顔が迫ってくる。
「見過ごせないな」
笑わない彼は、少し怖い。