嘘ごと、愛して。
「気分転換に今日、食事でも行かない?」
「あ……」
裕貴の顔を浮かべる。
けれど妹のことをよく知る人の話を無視することはできない。
裕貴だって分かってくれる。
「ぜひ!」
「外で逢うなんて久々だね。"私たち"もだけど、正義にも色々あったからね」
落ち着いた声が指す、"色々"ーー私たちと、そして正義に何かあったのだろうか。
直接聞くなんていう無謀なことはできないので、一刻も早く裕貴に確認したい。
「携帯買えた?」
私の手元を見た。
「あ、うん。水没させちゃって」
「ちょっと、貸して」
え?
手を出される。それが何の躊躇いもない行動で、反射的に携帯を渡した。
パスワードロックがかかっているから大丈夫だと思ったのだ。
けれど、彼は慣れた手つきでそのロックを一度で解除しみせた。
え…パスワード4桁の数字は、私と妹しか知り得ないはずだ。容易に予想できる数字でもない。
「ここ、」
インターネットに接続して、素早くお目当てのページにアクセスすると、携帯を返してくれた。
「真凛の日記だよ」
ーーMarin’s Diary
1番上にそうタイトルが書かれている、ピンク系統の可愛らしいホームページ。
胸を落ち着かせながら、ページをスクロールする。
「ーーお遊びはこれくらいにして」
金髪の彼は、私の耳元で囁いた。
「初めまして、志真ちゃん」