嘘ごと、愛して。


「へぇ〜そんなことが」

「彼に聞いても、誤魔化されてしまって」

教室に戻って先程の態度について正義に問えば、
『なんでもないよ、バーカ』と、はぐらかされてしまった。



結局、裕貴にも放課後に予定ができてしまったと口頭で伝えられず、メールで済ませた。
というのも、私のメールアドレスを真凛から聞いた峰岸晴人(みねぎし はると)さんから、連絡が入ったためだ。


校門で待っているという内容で、なんとなく正義が職員室に呼ばれている間に黙って帰ってきてしまった。

ううん、別に一緒に帰る約束をしたわけではないし。まぁ、何回か駅まで一緒に帰ったくらいだし。


「それで裕貴が言ってたんですけど、彼って、留学しようとしてたんですか?」


「半分正解かな。留学というより、今は両親がロスに住んでるんだよ」


2人で駅や学校とは正反対の喫茶店に入った。
路地裏にあり、今までお店があること自体、気付かなかった。学生には敷居が高そうな、少しお洒落なお店だ。外のメニューも英語だったし。


「何故、ロスに行かずに留年を?」


「うちの進級試験と向こうの学校の入学試験の日が同じでね。正義は進級試験を受けられず、留年したみたい」


「けど何故、留学を止めたんですか?」


「それは本人から聞いてみたら?」


「…そうですよね。本当のことなんて教えてくれないと思いますけど」


「どうして?」


どうして、って。
私はいつもからかわれているだけで、正義は肝心なことを何も言ってくれないから。



「ふっ」


珈琲を飲む手を止めて、晴人さんは吹き出した。


「なにか、おかしいことでも言いました?」


口元に手を当てて上品に笑う晴人さんは、じっと私を見た。


王子と呼ぶに相応しいお顔立ちなので、そんなに見つめられると普通に照れるんですけど!?


金髪の人は不良や遊び人といった勝手な印象を抱いていたけれど、ゆるくパーマが巻かれたその髪型は彼にとても似合っていて、文句のつけようがない。


「君、さっきからずっと、正義の話ばっかりだね」


「え…」


指摘されて気付いた。
ああ、私、なに話してるんだろう。
真凛のことを聞きに来たのにーー



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