嘘ごと、愛して。
「正義が好きなの?」
「熱っ」
運ばれきたばかりの珈琲をゆっくり飲んでいたが、おかしな質問に動揺し、舌がひりひりと刺激を感じた。
「大丈夫?」
晴人さんはすっと手を挙げて店員に合図すると、水を注文してくれた。その流れるような対応はさすがとしか言いようがない。
水を口に含み、落ち着いた頃を見計らって、晴人さんは口を開いた。
「いや、好きなのかなって思って」
「分かりません…私、誰かを好きになったことがないので」
「女子校だったとか?」
引かれると思ったが彼は表情を変えなかった。
少し、安心した。
「中学までは真凛と毎日同じで、それこそ登校から寝るまで、平日も休日も…あ、嫌だったわけではないです。私は真凛のことが大好きなので」
晴人さんはゆっくり頷きながら聞いてくれた。
「男の人はみんな真凛が理想だと思うんです。可愛くて優しくて……」
この気持ちは上手く伝えられない。
きっと、目の前の男性は真凛と同じ立場だろうから。