嘘ごと、愛して。


「なに、ぼっとして。熱でもあるの?」


手首を掴まれたまま至近距離で、顔を覗き込まれる。

近い、近い!


頭の中に警告音が鳴り響く。


「添い寝してあげよっか?」

甘い声で誘う正義のことは、苦手だ。

否定の代わりに睨みつける。



「アンタが望めば、俺はなんだってしてやれる」


「大丈夫だから」


「だからいつでも俺を頼って」


調子の良い性格に、その口から出る言葉の数々は嘘っぽくて、信用ならない。


「ありがと」


今までだって嫌いな人とは付き合わないようにしてきた。相性の悪い人からは逃げてきた。






けれど、


ーー鈴木正義からは逃げられない。




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