嘘ごと、愛して。
2杯目の珈琲を注文し、私たちはどちらともなく真凛の話に移った。
早く聞きたいのに、すぐに切り出せなかった。
真凛の日記を読んでしまったからかもしれない。
真凛は、私に正義が好きだと言っていた。
でもーー
「真凛の日記の登場人物は友達の多いあの子らしく、沢山の友達の名前が登場していました。そこに最も登場していたのは、"ハル"でした」
日記の中の真凛はいつもハルのことを愛おしそうに話していた。
本当にハルのことが大好きなんだと、ひしひしと伝わってくる。
「私がそのハル。中学生の頃から真凛と付き合ってた。今回のことも真凛から連絡貰って、泣きながら姉への謝罪を口にしていました」
「真凛が…」
「入れ代わりなんてことは無謀だし、上手くいかないことは分かっていたけど、止められなかった。真凛は何かに怯えていて、説得を聞き入れるだけの冷静さはなかったから。私にも考える時間が必要で、この1週間ちょっと、君に話しかけることができなかった。けれど、今日、やっと決意できた」
珈琲で喉を潤し、彼は続けた。
「年明け早々、真凛に別れて欲しいと言われてね。もう訳が分からなかった。私たちは上手くいってると思ってたし、ただただ信じられなくてね」
真凛に彼氏が居るとは知らなかった。
真凛は正義に片思いしていると聞かされていたのに。
「けれどその理由を、正義が教えてくれた。真凛は学校中の女子から嫌がらせを受けていたらしい。夏くらいから、年末まで、ずっと。よくある話だが、まさか自分たちの身に起きているなんて、考えもしなかった」
その表情が語る、悲痛。
私はかける言葉が見つからず、聞いていることしかできなかった。