嘘ごと、愛して。
「私が君に話せることは以上だから、出ると良いよ」
「先程、彼のことを親友と呼びましたが、私たちが入れ代わっていることを打ち明けるつもりはありますか?」
「君が望むなら」
真凛の好きな人は正義だと聞いていた。
年明けのバレンタインデー。
本当にチョコをあげたかった相手は正義ではなく、晴人さんだったのだろうか。
そして晴人さんを忘れるために、正義に告白したのだろうか。ーー代わりを求めるような、そんな性格ではないはずだ。
「妹に何が起きているのか分からない以上、彼には話すべきではないと思います」
もしも本当に真凛が正義を好きになり始めていたのだとしたらーー
「分かった。秘密にする」
晴人さんは頷いてくれた。
再びバイブが振動する。
もしかして何も言わずに帰ったことを怒っているのだろうか。
「留学を止めた本当の理由、君が知る時がくれば良いと思う」
「どうしてですか?」
珈琲の最後の一口を飲み干し、問う。
「その理由は、とても優しいものだから」
晴人さんは微笑み、伝票を取って立ち上がった。
「あ、お会計…」
「良いよ。また連絡するね」
手を軽く挙げて晴人さんは立ち去った。
晴人さんの言う、
"優しい理由"を知ることができた時、
私は、何を思うのだろうか。