嘘ごと、愛して。

〜side 晴人〜②

言い返す言葉が見つからない。
嫌がらせに対する相談を自分ではなく正義にしたことが、心のどこかでずっと刺さっている。
魚の小骨が喉につっかえているような、微妙な違和感。


「真凛の恋人が私でなく君であったなら、事態は変わっていたのかな」


「変わっていただろうな」


「…だよね」


正義は小さな溜息をついた。


「真凛が俺の彼女で、晴人に相談したのなら、こんな結果にはなってなかった。晴人ならあの嫌がらせを上手い方法で終わらせることができた」


ああ、そういうこと…。


「私が上手く立ち回れなかったせいだよ」


自分に相談してくれなかったことをどこか恨めしく思っていたけれど、正義が悪いわけでもない。
きっと真凛は私に心配をかけたくないと話してくれなかったのだろうけど、きちんと話せるほど、私は頼りになる彼氏ではなかったということだ。


「正義のせいじゃない、私の責任だよ」


だって、真凛は私の彼女なんだから。


「そう思うんなら、真凛に尽くしてやれ。まだ間に合うだろ」


「え、待って…」


突然背を向けた正義のバッグを慌てて掴む。


「まさか帰るつもり?」


「電話の折り返しがないからな」


「せっかく待ってたのに?」


「まぁそういう日もあるだろ」


いつものように白い歯を見せて笑う親友は、なんとでもないことのように言ってのけた。

「じぁな」

「……正義」

もう一度背中を呼び止める。


「ん?」

「夕食、付き合ってよ」

「…晴人の奢りなら」


村山志真さん。
やっぱり私は、
君と正義が、
恋人になれば良いと、勝手に思ってしまうんだ。



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