嘘ごと、愛して。
放課後、晴人さんに声を掛けられ、
早退した正義のお見舞いに行くことになった。
「誘ってもらえて良かったです」
電車に揺られながら少し遠い正義の自宅へ向かう。
「こっちこそ。君と一緒の方が正義も喜ぶからね…昨日の件で風邪引いたのなら、原因は私で、」
「……昨日の?」
「あ、こっちの話。さぁ、降りようか」
お姉さんと2人暮らしだという正義は立派なマンションに住んでいた。
よく遊びに来るという理由で晴人さんは合鍵を持っていて、セキュリティー万全の高層マンションの最上階に向かう。
内廊下には絨毯が引かれていて、足音ひとつしない静かな空間。
「ここだよ」
その階にドアは2つしかなく、右側の表札にに"SUZUKI"と筆記体で書かれていた。
晴人さんがチャイムを無視して、躊躇いもなく鍵穴に合鍵を指す。
開いた扉に緊張する。
正義の家だ。勝手に来て良かったかな。
「お邪魔します!」
「あら、アンタ」
晴人さんの声に反応し、
廊下に人影が見えた。
「お姉さん、お邪魔します!」
晴人さんは扉を開けて先に入るように促し、私の脱いだ靴まで揃えてくれた。
「晴人、来てくれて助かったわ。2人ともありがとう」
勝手に侵入したことを特に驚きもせずに、正義のお姉さんは歓迎してくれた。
豊満な胸が強調される白いタンクトップを着ていて、短パンから白く長い足が覗く。
晴人さんからは王子様のような気品溢れる色気が漂うが、お姉さんからは女性特有の色気を感じた。
ああ、正義のお姉さんは素敵で、彼がクラスの子に見向きもしない理由がよく分かったわ。