嘘ごと、愛して。
「私ーー村山真凛です」
「名前は聞いてたわ。あの子、女の子は家に入れないから晴人の彼女に会いそびれてたのよね」
よく感じてきた女子が同性を品定めするような視線ではなく、真っ直ぐに相手の目を見る温かい歓迎だった。
長い髪をひとつに束ね、長い首が強調されている。くるんとカールした睫毛に大きな瞳。笑うとえくぼの出る、可愛さと美しさの両方を兼ね備えた女性。
「お姉さん、冷蔵庫チェックしますよ」
「チェックしなくても何もないわよ。今から買いに行くところ。さぁ、入って」
「お邪魔します」
案内されたリビングはひどく開放的で、カーテンのない窓からは街が小さく見えた。
周りに高い建物はひとつもなく、見晴らしがとても良い。
「晴人、お腹空いた」
「はいはい。今から買いに行ってきますよ。正義にも栄養つけてもらわないと」
「アンタ、主婦だね」
「料理下手なお姉様を持つと苦労しますよ」
「アンタの姉じゃねぇし」
「正義の気持ちを代弁したまでです」
2人はとても仲が良く、気心の知れた間柄のようだ。少し前の、私たち姉妹を見ているようで懐かしさと寂しさが込み上げてくる。
「オムライスが食べたい」
「病人にオムライス?お粥ですよ」
「だから私が食べたいんだって」
リビングから見えるキッチンで2人の背中を見守る。
晴人さん、料理上手いのかな。
そう呑気なことを考えていると、
「うっせーな、」
リビングの入り口に、正義が立っていた。