嘘ごと、愛して。
「私は、正義が好き」
真凛が、晴人さんと正義のどちらを好きかなんて知らない。
だからーーこれは、真凛の言葉ではなくて。
ただ、自分の気持ちが溢れ出ただけ。
村山志真としての、答えだ。
顔が熱い。
きっと今、正義以上に私の顔は紅くなっているだろう。
「ありがと」
……そんな、顔するんだ。
少し照れたようにはにかんだ正義を見て、胸が痛む。優しくて温かい笑顔。
嘘をついて、ごめんなさい。
「やっぱり恥ずかしいから、忘れて!」
背筋が急に寒くなった。
一気に体温が下がる。
私は何をやってる!?
妹が学校にはもう来ないと決め付けて、
妹の気持ちも聞かずに正義に想いを告げて。
まるで真凛の人生を自分のモノであるかのように動かし、正義の言葉も、自分に向けられたモノのように錯覚して。
妹の身代わりの、志真に、
正義を好きになる資格なんてないのに。
この胸に渦巻く甘く、黒く、矛盾した感情を"はつ恋"と呼ぶのなら、気付かずにいたかった。