嘘ごと、愛して。


「なんで…」


日本初上陸。行列必須の人気店。
テレビで多くの特集が組まれた人気パティシエのチョコレート専門店。


昨日、宿題を見せてあげたお礼は何が良いのかと問われて、名前を挙げたお店だった。


好きでもなんでもない、ただの意地悪で好きだと言ってみただけの、チョコレートが目の前にある。



「買ったの?」

振り返った彼の机にも、彩り鮮やかなチョコの包み紙が見えた。

個別包装に力を入れているお店で、その外見もキャンディーのように包まれていてとても可愛い。


「あーん、口開けて。昨日、並んだんだから」


「…それっ、買うのに1時間は並ぶでしょ?」


「村山のためだもん」


満面の笑みを向けられる。
母親にサプライズして喜ぶ子供のような無邪気な笑顔。そこには計算なんて一つもないだろうと、錯覚してしまう程に。



「あーん」


どうせ、どこかの女に貰った贈り物だと、分かっているのにーー
チョコレートを乞うて口を開いた私は、


鈴木 正義に、とても甘い。


口の中に香るチョコレートと同じくらい、私は彼に甘いと思う。


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