嘘ごと、愛して。
目的地も告げずに歩き出した正義の隣りに並んで歩く。
白いシャツにグレーのジャケット、紺色のパンツを履いた正義は制服よりも大人びて見えた。
いつもと髪型も少し違い、毛先を遊ばせている。
星型のネックレスはキラキラと太陽に反射して綺麗だ。
隣りを歩く身として申し訳なく思えてくる。
すれ違うカップルたちはお洒落な格好をしていて、特に女の子は似合うメイクと洋服を身に纏い、華やかだ。
私に欠ける、華やかさをもった女の子たち。
真凛と比べるまでもなく、地味な自分に、色々と諦めていた。
そのひとつが、恋であったはずだ。
「なに、見てんの」
「え?」
伸びて来た手が、私の目元を隠す。
「他の男なんて、見なくて良いです」
「み、見てないよ!」
「どうだかねー」
白い歯を見せて笑う正義以外の男の人に興味なんてない。そう告げられたら良いのにね。
「正義だって、可愛い女の子たくさんいるし、目移りしちゃうでしょ?」
「しないよ。俺はアンタだけだから」
なんでそういうこと、真面目な顔をして言うのかな。笑って冗談っぽく言ってくれたらスルーできるのに、貴方の一言が胸の中を駆け回る。ざわざわと落ち着かなくなる。
「行こ」
答えない私に、手を差し出した。
その手を拒む理由はない。
けれど、手をとる権利はない。
「ほら早く」
「……」
強引に、彼が私の手をとってくれたことに
恥ずかしさと嬉しさがこみ上げた。