嘘ごと、愛して。

繋がれた手。
誰かの温もりがこんなにも、優しいものだなんて知らなかった。
手汗が出てないかとか手が荒れてるんじゃないかとか、心配事も多いけれど、それ以上に彼の温もりに心が落ち着く。


「ここ」

正義の目的地は、行列のできるチョコレート店だった。噂通り、沢山の人が並んでいる。


「あ、正義、くれたよね」

宿題を見せる代わりに貰った、あのチョコレートだ。実は完食したわけではなく、今でも大切に保管している。
だって、食べるのもったいないじゃん。


「店内ではチョコレートパフェ食べれるらしいから。一緒に並んで」

「良いよ」

普通なら億劫になる行列も、正義なら全く苦でないんだよね。

カップルや女子同士など、年齢層は若く、お喋りが飛び交う。



「この人数だと、だいたい1時間くらいだな」

「…この間貰ったあのチョコさ、頂き物?」


正義がこの行列に誰と並んだのかが気になった。
その時もデート来て、美味しいチョコレートパフェをご馳走したんじゃないの?


「他人に貰った物をアンタにあげるわけないだろ」

「じゃぁ、この列に並んだの?」

「そうだよ」

「へぇ」

「なんだよ?」

「別に。チョコレートパフェ美味しかったのかな、って思って」

「知らねぇよ」


手を繋いだまま、並ぶ。
そんな甘い時間に、刺々しい物言いしかできない自分が嫌になる。

正義は私のものではない。
正義が誰と何を食べようと、どういう時間を過ごそうと口出しできないはずなのに。
生意気に何を詮索してるんだろう。


「ごめん、変なこと聞いて」


少し不機嫌になった正義に謝ると、彼は予想に反して不敵な笑みを浮かべた。

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