嘘ごと、愛して。


妹の真凛は明るく、社交的で誰からも好かれるような女の子だった。

2ヶ月前のバレンタインデーには、憧れの先輩である鈴木正義に告白をしたようだ。徹夜でチョコを作り、頰にチョコの粉を付けていた妹を微笑ましく見守っていた。

結局、玉砕したようだが、
鈴木正義の断り方はとても丁寧だったらしく、思いを伝えられたことに満足したのか、そこまで落ち込んでいないように見えた。


だからこそ、私は、
鈴木正義を邪険にすることはできない。

いつか妹が戻って来た時に、正義との関係が壊れていたら、哀しむだろうから。
妹が今まで築いてきた関係を、壊したくないんだ。


「サンキュー」


ハート型の箱にたっぷりと入ったチョコレートを受け取る代わりに、宿題のプリントを渡す。
チョコが欲しいとねだった手前、突っ返すことはできなかった。


「こっちこそ、ありがとう」

「甘いもの好きなの?」

「まぁ」

「じゃぁ、放課後!クレープ食いに行こ」

「……」


素直に行くことが妹のためだと分かっていても、男性経験のない私は、尻込みしてしまう。

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