嘘ごと、愛して。
第6章 妹の秘密
「真凛……」
お似合いのポニーテールを揺らしながら、彼女はこちらに駆け寄ってきた。
百瀬 楓(ももせかえで)。
透き通るような肌にピンクのチークが映え、真っ赤な唇は華やかな印象を受けた。
「お願いだから、私に話し掛けないで」
周囲を伺いながら、腕をとられて体育館裏に押しやられる。
可愛い顔からは想像もつかない力に少し驚き、成されるがまま後退する。
将来の夢はテニス選手のようで、鍛えているのだろう。
「嫌がらせのつもり?」
やはり周囲を警戒しながら百瀬さんは言う。
「何度謝られても、許せることじゃないから」
「……」
謝る?
真凛は彼女に何かしたのだろうか。
女同士の喧嘩は長引きそうだ。
「どうしたら許してくれる?」
妹の代わりに、なんでもするよ。
「どうしたら?じゃぁ消えてくれない??貴方がいなくなって私は試合に出れるようになったし、晴人さんはフリーになったわ。私にチャンスが巡ってきたの。貴方がいないことが私の幸せよ」
ーー消えてくれない?
その一言に頭が痛くなる。
仮にもかつての親友に言うセリフ?
「ちょっと待って!言っていいことと悪いことがあるでしょう?」
「なに、逆ギレするの?そっちが悪いのに?」
強気で自己中心的な女の発言に、苛立つ。
百瀬楓ーーきっと、こいつのせいで真凛は学校に来れなくなったんだ。