嘘ごと、愛して。
「なに落としてるのよ!」
唖然とする私を咎める百瀬さんの後ろから、
さっと携帯を拾う手が伸びてきた。
「へぇ、今時の高校生はませてるねー」
聞き慣れた声。
ゆったりとした動作で携帯が拾われる。
「画面割れてなくて良かった」
そう言って百瀬さんに携帯を返す手を見つめる。
「正義先輩、ありがとうございます!…見ちゃいました?」
「見たよ」
突然現れた正義は躊躇いもせずに即答だった。
「最低だと思いません?この頃、晴人さんと付き合ってたんですよ。テニス部員はみんな知ってます!ひどいですよね」
「この写真をきっかけに嫌がらせが始まったわけか。納得だわ」
百瀬さんの声のボリュームが上がる中、正義はいつもと同じテンションで言う。
どんな表情をしているか、確認することが少し怖かった。
「この女、今度は正義先輩をたぶらかそうと計画してました!」
得意げに笑う彼女に、言い返す言葉もない。
真凛はいったい、何をやっていたの?
この写真が原因で嫌がらせを受けることになったとしたら、ただの自業自得だ。
真凛が晴人さんを裏切るような行為をしていたことに、胸焼けがする。
裕貴は気付いていたのだろうか。
「で?そこに写る2人はどういう関係なの?」
正義はどうでも良さそうに言ったのけた。
「アンタは晴人と生徒会長、どっちが本命なわけ?」
その問いに答えられるわけがない。
私は真凛ではないし、この事実を初めて知ったのだから。
こっちが説明して欲しいくらいだよ。