樛結の実 ー愛も罪も 番外編ー
第四章 解く
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「決まった?」
J168が言った。もう約束の日が来てしまったのだ。
理麗は困った顔をする。
「まだ……」
J168は鼻から大きく息を吐き、
「それは困ったな。どっちか決めてくれないと」
少し呆れた声を出す。
「だって何も分かんないんだもん。そんなのムリだよ」
何もヒントをくれないJ168に不貞腐れてみせた。
するとJ168はわしわしと髪を撫でて、
「そう…。じゃあ理麗だけ特別だからな。本当はこんな事しちゃいけないんだけど…。ほら、これが理麗の運命の赤い糸で結ばれている二人だよ。さぁ、選んで」
と言って、写真を二枚差し出した。
理麗はドキドキしながら、その写真を受け取った。そしてその写真を見て、理麗は息が止まる程動揺した。
一路じゃない。その写真に映っている人物は、どちらも理麗の知らない顔だった。
「なんで…だって、婚約してるのに……」
とその時、何故か硝子の靴が落ちて無残に砕けた。
理麗は指先が震え、自分で自分の手を握った。
これで完全に一路とは縁が無かったと判明した。
「イチロくんとは最初から結ばれて無かったんだね?」
理麗はJ168の体を掴んで訊いた。そんな理麗の顔を、J168は黙ったまま冷静に見つめている。
「信じてたのに…どうしてなのっ!?」
大声を挙げた。
視界は徐々に白茶けて行き、ぼやけていた焦点がはっきりと見えてくる。そこにはJ168の姿は無く、天井があった。それでベッドで寝ていた自分に、状況を把握した。
「……夢?」
ほっとした様な…悲しい様な…複雑な気分だった。
天窓の向こうはまだ藍色をしている。
「イヤな夢見たな…」
理麗はボソッと呟くと、朦朧とした頭を布団に潜らせた。