彼を好きになるまであと、8秒.
「やっとテストが終わったね〜」
「うん」
ー7月末。
夏のジリジリとした暑さが教室を蝕み、一部のクラスメイトたちは下敷きをパタパタと団扇代わりにして涼んでいる。
香織に相談してから、特に変わったことはなく日々は流れ、
気が付けば、今日でこの高校に入学してからの初めてのテストが全教科終わっていた。
「やっと解放だ〜」
「帰りどっか寄って行かない?」
「俺は、帰ったらすぐ寝るぞ!」
クラスのみんなが各々緊張が解れたかのように話している。
クラスの雰囲気もここ一週間ピリついていたけれど、一気に軽くなったのが伝わってくる。
「初めてのテストにしては、難しかったよね」
「うん、難しかった」
香織の言う通り、初めてのテストにしては、難しかった。
応用も予想外にたくさん出てきて
ちゃんと勉強したはずだったのにな....
「ねえ、あかりさ」
「ん?」
「さっきからずっと思ってたんだけど...
ちょっと顔が赤くない?」
私の顔を心配そうな表情で見てきた香織。
「そう、かな?」
自分の頬に手の甲を当ててみる。
けど、特別熱いってわけでもない...と思う。
確かに。
今朝から頭はズキズキと痛くて、
テスト中も頭がずっとぼーっとしていた。
頭がはたらいていないというか...
なんて言ったらいいんだろう。
とても小さな小石が頭にポンポンと投げられているような
そんな頭の痛さを感じる。