彼を好きになるまであと、8秒.
いつもなら「送らせて」なのに...
今日は「送る」と言い切った。
「で、も、大丈夫だよ?」
私、一人でも帰れる。
多分、もう熱は引いてるだろうし...
優くんに迷惑はかけられない。
「俺が大丈夫じゃないの。
黙って送られときなさい。」
私の頭をポンポンと優しく撫でた後、「鞄持ってくるから待ってて」と残し、
私の鞄と自分の鞄を取りに教室に戻って行った。
ーー優くんは近くにいないのに、ドキドキと心臓の鼓動が先からずっとうるさい。
体の熱もさっきからずっと冷めない。
熱の熱さとは違う熱さが全身に駆け回る。
自分の手でパタパタと体の熱を抑えようとしていた時、
ガラガラと保健室の扉が開いた。
「深山さん、大丈夫?」
声と同時にカーテンを開けながら、心配そうに覗き込んでくれた保健室の先生。
私がコクリとうなずくと、体温計を渡してくれた。
すると、ニコニコ微笑みながら「深山さん、羨ましいわあ」と呟いた。
羨ましい?
私が首を横に傾げる。
「高杉くん、ずっと深山さんの傍にいて、片時も離れなかったのよ」
「え?」
「熱さまシートも貼ったし、大丈夫よっていったんだけどね?
それでも深山さんのことがすごく心配だったみたい」
そう言って「若いっていいわね」と微笑みながら言った先生。