初恋とチョコレートと花束と。

そう教えると、アリスは「えぇー!?」と叫んだ。
それも、下の階にまで聞こえるんじゃないかってくらいの大きな声で。

「ちょ、アリス、声大きすぎだって!」
慌ててアリスの口をふさぐ。
矢川くんまで、何事かとこっちを見てるし。

「いや、だってさ!え、本当にそうなの!?」

かなりパニックになってるみたいだけれど、耳打ちするのだけは忘れてない。
私はその言葉に、こくこくとうなずく。


「そっかー。なんか、あたしが想像してたのと違ってたや。もっとこう・・・常に寝てるか授業をサボってどこかに行ってる人だと思ってた。一匹狼な人ってだいたいそんな感じだし」
・・・それ、多分マンガの読みすぎじゃないかな?

それにしても学校で寝てる矢川くんかぁ・・・。なんかイメージできない。
確かに一匹狼・・・って、一匹狼って何?


私達がそんな会話をしてるうちに、他のクラスメイト達も次々に登校してきていて。
今は教室の前側にいるからいいけれど、そのうち邪魔になる気がする。

「ね、アリス。ちょっと場所、変えない?他の人達も登校してきたし」
私がそう言うと、アリスはすぐにオッケーしてくれた。

「じゃ、綾。行こっか!」



――それからしばらく歩いて、ついた場所は中庭。
アリスと私は迷いもなく置いてあるベンチのひとつに座る。

『中庭にはハサミを持った女がいて、見つかると体をバラバラに切られる』という七不思議があるからなのか、人はほとんどやってこない。
だから秘密の話をするにはピッタリの場所。


「・・・でも、矢川くんがあんなだったなんて全然思ってなかったよ。黒髪にメガネ。おまけに勉強家だったなんて」

黒髪が意外って・・・。アリスはいったいどんな感じだと思ってたんだろう?
そう聞くと、すぐに「金髪!あとケンカばっかりやってる!」と返ってきた。

さすがに小学生でそれは・・・ないんじゃないかな。
だいたいアリスが好きなマンガって、高校生が出てくるやつばかりじゃん。

あ、あと多分、本人にそんな事言ったらショックを受けると思うよ?

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