初恋とチョコレートと花束と。
「・・・今年度の運動会の組分けは、このようになりました。赤組になった人も白組になった人も、それぞれ頑張って下さいね」
3時間目は社会。だけれど授業はもう終わって、今は余った時間で運動会の組決め。
な・ん・だ・け・れ・ど。
悲しいことに、矢川くんと組が違う。
それぞれの組がわかった時に「別れちゃったね」と言ったけれど、矢川くんから返って来た答えは「・・・うん、そうだね」だけ。
ということは多分、矢川くんはあんまり気にしてないんだろうな。
・・・ってあれ?なんで私、矢川くんと違う組になったってだけでこんなにがっかりしてるんだろう?
去年なんて、矢川くんと同じ組になってるかどうかすら知らなかったのに。
そんなことを考えてるうちに休み時間になって、アリスにさっきの話をしてたとき。
「・・・そっかぁ~。じゃああたしと綾、今年は分かれちゃったね」
寂しそうにそう言ったアリスの言葉が信じられなくて、思わず「え?」と聞き返す。
「だから、運動会の話。実はあたしも今年は白組なんだ」
私のためにもう一度言ってくれたその言葉が、水の中に入れた石みたいに重く沈んでって。
目の前が暗くなってくのと同時に、遠くでアリスと、それからなぜか矢川くんの声が聞こえた気がした。