初恋とチョコレートと花束と。

「今日は早めに眠っておきな」と言われて、私はうなずく。
差し出された隣のイスに座ると、先生がさっそく表紙を開く。

「わぁ、みんな水着着てる。お姉ちゃんが喜びそう」

最初のページを見て思わずそう言った私に、不思議そうな顔をして「どうして?」と質問する先生。

「だってこの間お姉ちゃんに借りてた本を返しに部屋に入ったら、床に水着を着た二人の女の子が表紙の――「わー、ストップストップ!!」」


慌てて話をさえぎった先生は「・・・まさかとは思うけれどさ、それってなんかのアニメキャラだった?」と聞いてきた。

その質問にどう言おうかしばらく悩んだけれど、「多分そうなんだろうけれど、何のアニメかまでは知らない」と正直に答える。

「・・・そっか。まぁあの子らしいと言えばあの子らしいけれどね」
そう言うと、先生は開いていたアルバムをパラパラとめくってからそっと閉じた。

どうしてだろうと思ったけれど、その理由は時計を見上げたときに分かった。
私が知らないうちにもう給食が終わるくらいの時間になってて、あと1時間で今日の授業も全部終わるなぁとか、家に帰ったらどうしようかなぁとか思ってた時。

私はあることに気がついた。

「ねぇ先生・・・私って何時間寝てたの?」

確か、3時間目と4時間目の間の休み時間にアリスと話してて、気がついたら保健室にいて、それから今まで先生とお姉ちゃんの話をしてたから・・・。


・・・・・・ダメだ、結局どのぐらい寝てたのかわかんないや。

あれこれと悩んでいたら先生が「んー、あたしも詳しくは覚えてないけれど、1時間半くらいじゃ無いっけ」と教えてくれる。

げっ・・・。そんなに私寝てたんだ・・・。

そう思っているうちに昼休みが始まるチャイムがなって、先生にお礼を言った私は保健室を出ようとした。



――が。
ドアの向こうにいた相手に驚いて、開きかけたドアを思いっきり閉めてしまう。

先生が「ん?どうしたのー?」とかなんとか言ったような気もするけれど、パニック状態の私には全然聞こえてなかった。


なんでなんでなんで!!!!???
どうして矢川くんがいるの!?
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