初恋とチョコレートと花束と。
いや矢川くんもこの学校に通ってるんだからいるのは当たり前・・・ってそうじゃなくて!!
つまりええっと、どうして矢川くんが保健室の前にいるの!?
彼は私が驚いてるのも全く気にしてない感じで「さすがにそれはないんじゃないかな、山下さん。いくらなんでも僕だって傷つくよ」と言いながら保健室に入って来た。
「だ、だってだって!!ドアを開けたら目の前に矢川くんがいるんだもん!私じゃなくてもびっくりするよ!」
なんて言い返すけれど、矢川くんは無視。
それどころか先生に向かって「はじめまして、姉さん」とか言ってる。
・・・って、え?姉さん??
どういうこと?
「あー、そういえばここ君も通ってるんだっけ。まぁ厳密にはあたしが大学卒業するときに1回だけ会ってるんだけれど、あんなに小さい時のことなんかさすがに覚えてないよね」
先生も普通にそう言いながらアルバム片付けてるし、わけわかんない!
私が矢川くんと先生の関係を頭の中で考えてるうちに矢川くんが「それじゃあ、僕は様子を見に来ただけなのでこれで。・・・あ、山下さんのことありがとうございました」と言ってドアを開けた。
私ももう一度お礼を言って保健室を出ようとしたとたん、目の前で大きな音を立てて閉まるドア。
や、やられた・・・。これって絶対さっきの仕返し・・・だよね?
あの時はびっくりして閉めちゃったけれど、だからってそのお返しするかなぁ?
そう思いながらドアを開けてろう下に出ると、矢川くんは壁によりかかって私を待っててくれていた。
「遅かったね」なんて言うけれど、ドアを閉めたのはそっちじゃん。
・・・・・・それでも教室に行かずに私を待っててくれたのはちょっと、いやすごく嬉しいかも。
「矢川くんのことだから一人で先に教室行くと思ってた」ってこっそり呟いたら、普通に聞こえていたみたい。
「・・・山下さんは僕を何だと思ってるの」
立ち止まって振り返った矢川くんに、私は何も言い返すことができなくて。
だって『メガネで頭がよくて、たまに何を考えているかわかんない人』
・・・なんて思ってるとか絶対に言えない。
言ったらまたからかわれそう、矢川くんだもん。
「あはは・・・」と笑ってごまかしてるうちに、教室の前に着いた。
皆のじゃまをしないよう静かに開けようとしたけれど、失敗。