初恋とチョコレートと花束と。
「どんな歌、かぁ・・・。大体アニソンと、後はRoaちゃんの曲かな」
お姉ちゃんごめん、全然わかんない・・・。
「まぁ、自分の好きな歌を歌えばいい、ってことだよ」
「好きな歌・・・校歌とか?」
そう聞くと、お姉ちゃんはうーんと困ったように頬杖をついた。
「さすがにそれは無いと思うな。例えば・・・あ、あれは?綾が毎週楽しみに見てるあの魔法少女のやつ」
私が毎週見てるやつ・・・あっ!
「もしかして、セヘルガールのこと?」
「さぁ?タイトルまでは知らないけれど、それのオープニングとかなら歌えるでしょ?多分入ってるだろうし」
確かにセヘルガールの歌なら全部覚えているから、歌えるかも!
歌うの校歌じゃなくてそっちにしようっと!
「ありがとうお姉ちゃん!」
「いえいえ、どういたしまして。さ、宿題早く終わらせて、ご飯食べよ」
「うんっ!」
カラオケ行くの、今から楽しみだな・・・!
――次の日。
アリスに会わないように家を早く出ると、途中で矢川くんを見つけた。
これって話しかけた方がいいのかな・・・。でも昨日『話さない方がいい』って言われたばっかりだし・・・。
どうしようか迷ったけれど、思いきって矢川くんに話しかけることに。
無視して先に行くのも、なんか嫌だったし。
「・・・おはよっ、矢川くん」
隣に並んでそう言うと、小さく「ん」と頷く。
よかった。もしかしたら返事してくれないかなって、ちょっと思ってた。
それにしても・・・。
「矢川くんの家って、この辺りなんだね」
「うん。というか、ずっと集団下校の班一緒だったでしょ」
え、そうなの?初めて知ったよ。
見かけたことはあったけれど、まさか班まで一緒だったなんてびっくり。
――あ。
そんな会話をしている中、一軒の店の前で足を止める。
通学路の途中にある、ケーキ屋さんの前の十字路。
いつもならここでアリスと待ち合わせたり、別れたりするんだけれど・・・。
・・・ええい、いいや!今日はアリスを待たないで先に行く!
「どうかした?」
「・・・ううん。ごめんね、なんでもない」
振り返った矢川くんにそう伝えて、私は学校に向かって歩き出した。